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2014年4月

『「経営者保障のない融資」を促進!?

…「経営者保証に関するガイドライン」が適用開始』

 

■年度末の資金繰りに苦労された方も、そうでない方も・・・

 年度末の資金繰り。
 まったく心配なく、気にもせずに通り抜けた方・・・
 少しだけ心配したけれど、無事に通り抜けた方・・・
 まだまだ心配で、通り抜け切れていない方・・・

 年度末や年末が近づくと、まさに悲喜こもごものドラマがあります。
 Tax(税務会計業務)のみならず、Financial(資金調達業務)も主たる業務とする当社は、 ときに“駆け込み寺”のような様相になります。

 先月3月も、様々なドラマがあり、まだまだ続いているドラマがあります。
 とにかく「クライアントを、ホンネで徹底して守り抜け!」と、熱血社員に号令をかけますので、金融機関、ときに国税庁、税務署、関係省庁まで出向いて、年度末の末日まで、一緒に走りまわっていました。
 若干、手前味噌をお許しいただきたいのですが、「これまで、こんなことまで、親身になって走りまわる会計事務所に出会ったことがなかった・・・」とのひと言に、すべての疲れも吹っ飛んでしまうのです!

 しかしながら現実は厳しく、苦しいときに限って、金融機関からは「経営者保証」のみならず「第三者保証」まで求められてしまうことも・・・
 そんな、中小企業とともに修羅場をも走り抜けてきた私達、職業会計人にとっても、まさに光が差すような「経営者保証に関するガイドライン」!
 今年2月から、適用スタートしていますので、ご紹介したいと思います。

 

■中小企業経営者の86%が個人保証?!?

 長年にわたり、社員も雇い、中小企業を経営していて、資金を借り入れた経験をお持ちでない方・・・おそらく皆無に近いでしょう。
 中小企業庁によると、中小企業経営者のなんと86%が、会社が資金を借り入れるに際してなんらかの個人保証をしているというデータがあります。
 確かに、経営者が個人保証をすることによって、(借りた金を返さなくても良いという)モラルハザードを防ぎ、信用補完によって中小企業自体の資金調達を円滑にする・・・等々の面もあります。

 しかし、ほとんど例外なく経営者保証を求められたり、あまりにも重い保証債務を負ったりすると、どうでしょうか。
 そもそも中小企業経営をしようという機運を削ぎ、投資を必要とする新しい事業や、設備投資に対して躊躇したり、経営者の生活そのものを破たんに追いやってしまったり・・・マイナス面が大きいのも、また事実です。

 現に、弊社にご相談に来られる方にも、中小企業経営で個人保証をしていたために、自宅まで失ったり、保証人としての過去の金融事故がいつまでも尾を引いて、新しい会社・事業を起こそうにも、資金が借りられず実現に至らず、といったケースが少なからずあります。

 

■「経営者保証に関するガイドライン」制定に向けた趣旨・・・

 政府は現在、新規開業率を4.5%から10%台へ引き上げようと、あらゆる施策を総動員しているように見受けられます。
 かつて、前安倍政権の時代には、“再チャレンジ”というスローガンが、声高に掲げられていたことを記憶されている方も少なくないと思います。

 いきなり大企業を起こすことはできないのですから、中小企業の開業率を上げるためにも、 また一度失敗したからといって、経営者として失格の烙印を押されるわけではなく、むしろ失敗した経験・ノウハウを活かして、再チャレンジできる社会をつくる!
 現状の経営者保証制度を改め、一定の場合には経営者保証を求めない=「経営者保証に関するガイドライン」は、かかる趣旨で制定されたのです。

 すなわち「経営者保証に関するガイドライン」は、中小企業経営者が金融機関等へ差し入れている個人保証について、

主債務者である中小企業、

保証人である経営者、

債権者である金融機関等

という3者間での「経営者保証に関する自主的なルール」を設けよう、というものです。

■「経営者保証を求めない」場合って?

 あくまでも自主的なルールであり、残念ながら強制力や法的拘束力はありません。

 しかし、自主的とはいえ

「経営者保証のない融資を促進」

「既存の保証契約についても適切な見直し」

「保証債務の履行請求を限定していく」

という効果を期待して、2月からガイドラインがスタートした以上、「経営者保証を求めない一定の場合」について、しっかりと理解しておきたいと思います。

 これから新たに保証契約を締結する場合だけでなく、これまでの保証契約について見直しをする場合などについても、このガイドラインは適用されることも留意しておきたいです。

 「経営者保証に関するガイドライン」は、経営者の個人保証について、次のように定めています。第三者保証についても、ABについては、経営者保証と同様の取扱いです。

  1. 法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと

  2. 多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に、一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて100〜360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること

  3. 保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は、原則として免除すること

 

■中小企業経営者はどうすれば???

 「経営者保証に関するガイドライン」では、「経営者保証のない融資を促進」していくため、経営者に対しても様々な対応を求めています。
 中小企業、経営者、金融機関等の3者間での自主的ルールである以上、主債務者である中小企業、これまで保証債務を負ってきた経営者の自己努力が求められるのも当然。
 是非とも、自己努力のハードルを乗り越えていきましょう!

  1. 会社と経営者の関係を明確に区分・分離していくこと

     この点が、大企業と中小企業とで、もっとも大きく違う点かもしれません。
    会社と経営者の資産等をしっかりと分けていくこと。
     役員報酬、賞与はじめ会社と経営者との資金の流れを、経済合理性や社会通念上の適切な範囲としていくこと。
     経営者や経営者ファミリーの飲食・交際費等を会社経費で落とさないこと。
      誰ですか?
     それじゃあ、会社をつくった意味がないじゃないか・・・などと言っている方は???
     要は、経営者が会社のモノ=自分のモノ、というような公私混同しない!という要請です。会社と経営者のカネ・モノ・ヒトを明確に分けて、社員の前でも内部統制をしっかりと示して、「経営者保証のない融資」に近づければ、一石二鳥かもしれません。


  2. 会社の財務基盤を強化すること

     それができれば、お金など借りない!! という声も聞こえてきそうです。
     要は、経営者の個人資産・返済能力に依存しない体質をつくり、会社という組織体自体としての財務体力、借入金償還能力を高めていく!という要請です。
     「会計を通じて、会社を強くする!」ことを使命とする私たちも、まさに願ったり叶ったり!
     クライアントと一緒に、どこまで経営体質強化できるかどうか、勝負どころ!!です。


  3. 経営の透明性を確保すること
     
     財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示などによって、経営の透明性を確保すること。
     「中小企業の会計に関する基本要領」等に則った、信頼性ある財務諸表を作成して、顧問税理士などの外部専門家による検証を受け、債権者たる金融機関に対して、必要な財務諸表を適時適切に開示すること、が要請されています。
     「経営者保証のない融資」を受けることができる会社にしていくということは、「会社と経営者の関係の明確な分離」「会社の財務基盤強化」「会社の経営の透明性確保」等々、まさに「会社を強くしていく!」ことに、外なりません。
     「経営者保証ガイドライン」スタートを、一つの好機と捉えて、是非とも会社を強くしていただきたいと、強く願っています。

 

  平成26年(2014年)4月         

 

JSKグループ 共同代表       
 TFS国際税理士法人 理事長     
山 崎  泰