4月号ブログでは、バングラデシュ・レポートをお届けしましたので、5月号は、シンガポール・レポートをお届けいたします。
■ダッカを発って、シンガポール到着
3月4日、ダッカを発って、シンガポール到着。
一睡もせずに、早朝4時20分にチャンギ国際空港着。
チャンギは、まさに24時間眠らないハブ空港とはいえ、さすがにこの時間帯は人が少ない。
空港6時始発のリムジンバスで、市内の宿泊ホテルへ。
アーリー・チェックインができるかどうかが、今日一日の体力、仕事にかかわるだけに、 交渉は真剣そのもの。
シンガポールには、オーバーナイトで飛んでくるビジネスマンが多いせいか、ホテルマンも事情はよくわかっているようで・・・低層階なら空いているとのこと。
もちろん、ビジネスでの滞在なので、低層階でもどこでも、とにかく寝られれば、どこでもOKという感じです!
さっそく部屋に入って、日本時間9時の全体ミーティングに間に合うように、日本へメールした後、2時間だけ仮眠して、シンガポールでの活動開始です!
■アジアの拠点、シンガポール
シンガポールは、地下鉄やバスが発達していて、外国人にとっても移動がとても便利で分かりやすいのが特徴です。
地下鉄には、通常のシートの両脇に1席ずつ優先席。日本のように、
優先席に我がもの顔で座っているような厚顔無恥な若者はいません。
車内がきれいで、マナーがとても良いのが、シンガポールの公共交通機関の特徴でもあります。
13時30分、地下鉄を乗り継いで、NAC名南のシンガポール所長のオフィスへ。訪問の目的は、シンガポールの東南アジア拠点としての位置づけの確認です。
「東南アジアに関しては、シンガポールが、東南アジア南部をカバーする拠点。香港が、中国本土をカバーする拠点として位置づけている」
「シンガポールは、以前は商流の拠点か製造工場という位置づけだったが、 消費・購買力も高く、可処分所得も日本よりも高いことなどから、今ではショッピングセンターに出店する小売業から、ITや保険会社のようなサービス業まで、幅広い業種がシンガポールに進出」
「投資規制もないことからも、アジアの拠点としてカバーするには、シンガポールが良いのでは」
と、冒頭から、まさに私の判断を後押しするかのようなコメント。
まさに、我が意を得たり!といった感じです。
■ドバイやバーレーンとまではいかない・・・シンガポールの労働政策
ただ税制に関しては、以前のような優遇税制という段階は過ぎているのも事実です。むしろ経済が過熱し、インフレ気味。作為的に、不景気にさせないといけないような状況ですらあります。
人口が500万人と少ないので、人を採用すると失業率はすぐに下がります。マリーナ・ベイサンズなどの観光効果もあり、労働人口が不足気味。
500万人のうち、いわゆるシンガポール人は約8割。政策的に企業に外国人労働者の雇用増を課してでも、労働需給バランスをとっていくのか・・・人口政策は、労働政策とも絡んで、シンガポールにとって大きな課題なのです。
ドバイやバーレーンなどでは、8割〜9割を占める外国人労働者が働き、自国民が働いている姿をあまり目にすることがありません。自国民はなんと社会保険料ゼロ、医療費もタダか1割くらい。
シンガポールも、ドバイやバーレーンなどのように移民比率を上げる政策を、という議論もあるようですが・・・豊かな石油資源に恵まれ、万が一、外国資本が撤退しても食うに困らない中東諸国とは異なり、資源のないシンガポールはそこまで大胆な政策はとれないだろう!というのが私の率直な見方です。
■TPPが発効しても・・・ヒトやサービスの自由化までは??
シンガポールには相続税や贈与税がないことから、日本の資産家がひそかに注目しているとも噂になっています。
しかしながら、シンガポールに移住して、その後シンガポールで蓄積した資産ならともかく、日本で蓄積した資産の移動では・・・そんな簡単に日本の税制が見逃すはずがありませんのでご注意を!
TPPやFTAに関しても、基本的にはモノの移動自由化が主役・・・。
現実問題として、労働パスなくしてはヒトの移動ができないのです。
米国⇔シンガポール間で行われている、サービスの自由化、
インド⇔シンガポールで行われている、会計士の移動自由化など、2国間で個別に展開されている自由化はありますが、TPPが発効しても、本格的なヒト・サービスの自由化までには時間がかかるでしょう。
■海外で頑張る中小企業を応援したい!
打ち合わせを終えて、16時。
新宿区からシンガポールに進出している、印刷会社経営者と合流。
紙媒体の市場が縮小しつつある日本から、シンガポールという新たな海外市場に進出して勝負する中小企業の姿にふれると、同じ日本人として、心の底から応援したい気持ちになります。
日本で磨いてきたデザイン力、期日納品の信頼性を武器に、シンガポール市場で勝負している印刷会社。スピードと利便性を武器に、オフィス街のど真ん中で店舗展開しているスピード名刺会社・・・海外市場で頑張る中小企業を一体となって応援するため、私たちも“逃げも隠れもできないように” この地に駐在員事務所を置こうという気持ちが、シンガポール滞在時間の経過とともに強まってきます。
■Powerful Breakfast Meeting!
3月5日(火)、シンガポールの知人が、「朝7時15分にYMCAに来てくれ!」というので、早朝勉強会に参加。
そこで開催されていたのは、BNI(ビジネスネットワークインターナショナル)シンガポールのブレックファーストミーティング!毎週火曜日、7時30分から開催しているとのこと。
生まれて初めて、名前を知り、会合に参加したほど・・・BNIという存在すら知らなかったのですが、BNIは、いわば全世界レベルで展開するネットワーク時代の異業種ビジネス交流会。
BNIシンガポールで待っていていたのは、シンガポール、マレーシア、華僑などの経営者・・・スモールビジネスを強化する、またグローバルな展開をする強力なツールになるということで、日本でもBNIに加入している知人が、シンガポールでのビジネス展開でも大いに頼りにしている組織なのです。
BNIは、プロフェッショナルの ビジネスピープルが戦略的なパートナーシップをつくる組織ゆえ、1Chapter(支部)1業種に限定されているそうです。世界各地で展開されており、この種のネットワークでは世界最大規模らしい。
ちなみに、現在、シンガポールには10のChapterがあり、グローバルなビジネス拠点らしく、かなり活発な活動展開をしています。
■シンガポールの経営者とホンネで議論…
ミーティング開始時刻より早く着いた私は、まずは20名くらいのメンバー全員と名刺交換。初参加は、私と中国人女性の二人だけ。とにかく、朝からメンバーのパワーが凄いのです!
保険会社、不動産会社、旅行代理店、健康食品等々・・・とにかく、シンガポールでのビジネス展開はもちろん、日本の状況についても、熱心に聞いてきます。各分野のプロが集まっているので、話していてもとても興味深いのです。
途中、メンバーによる自社サービスのPR(会員の特権だそうです・・・)タイムがあり、私にもコメントする時間が・・・
私からは、ビジネスのみならず国としてのシンガポールに関心をもつに至った理由をお話しました。
@人口政策、移民政策等の労働政策
A言語も含めた教育政策
B徹底した観光政策や外貨獲得・外国資本への開放
Cハブ空港・物流など、ヒト・モノ・カネ・情報が集まる拠点化政策
Dそれを支える政治の安定(“明るい北朝鮮”と揶揄されていることま
では、さすがに言いませんでしたが・・・)
そして最後に、日本も東京も“シンガポールに学ぶ点が多い”という持論を展開!
異業種交流会なのに、大上段に振りかざしたことをいうヘンな日本人だな・・・と思われたかどうか???
シンガポール訪問の際には、なるべく火曜日を絡ませて、BNIシンガポールのメンバーと、ホンネでぶつかってみたいです!!
■出張最終日にして、やっとジョギングが!
3月6日、ダッカ〜シンガポール出張最終日にして、初めて朝のジョギング!
何も知らない出発前は、ダッカでも走ろうと思って、愛用のジョギングシューズを持参したのですが・・・そもそも道路自体が舗装されていない箇所が多く、あまりの土ほこりの多さに、地元に住む人達からも止めたほうが良い・・・と諭され、早々に諦めた次第。
海外に出て、ジョギングすらできない環境も初めて!砂漠でも、半日デモの上海でも走ったのに・・・
シンガポールでも、連日朝が早すぎて・・・やっとジョギングにこぎつけた次第です。
シンガポール出張の初期の目的も達成。
今秋の顧問先様とのシンガポール視察とともに、駐在員事務所開設の段取りも整えて・・・やっと心も体も、落ち着いて走ることができる。
マリーナ湾を、シティホール〜ビジネス街〜マリーナベイサンズ沿いに1周すると、ちょうど5kmくらい。30分かけてゆっくり走ると、本当に心も体も爽快になります。
夕方のジョガー数に比べれば、さすがに朝7時台は少ないのですが・・・
日本にも、こんな場所があったらどんなにか快適だろう!と思わずにはいられないくらいの素晴らしさなのです。
■日本は、シンガポールに学ぶべき・・・刺激的なミーティング
それにしても、昨夕のミーティングは刺激的でした。
夕方、バンコクからシンガポールに帰ってきたばかりの弁護士と面談した際の出来事です。
まず切り出したのは、どちらかというと私・・・
日本は、少なくとも東京は、シンガポールに学ぶべき!
- 人口政策⇒シンガポールは、移民政策で労働力を支え、人口500万人、面積東京23区しかない小国が、経済成長を続けてくる。
- 経済・税制政策⇒外資系企業、さらには外国人の目がシンガポールに向くように、税制はじめ徹底した経済政策をとり続ける。
- 教育政策⇒4ヶ国語を公用語として、世界に通用する人材育成を徹底して進めてくる。世界に通じる人材育成こそが、自国の発展する(生き残る)道という背景もあったに違いない。
- 観光政策⇒カジノ、マリーナベイサンズ、ナイトサファリ、F1誘致等々・・・これでもかというくらい、徹底した観光政策で、外国人観光客も集める。
海に囲まれた島国、小国、資源なし・・・まるで日本と置かれている状況が酷似しているように思うのです。だからこそ、シンガポールに学ぶべきだと、熱い口調で切り出したのです。
■シンガポールにすら出てこれなかったら・・・
弁護士は、大きく頷いた後・・・
シンガポールにすら出て来れなかったら、どこの国にも出て行くことはできない。
そしてシンガポールに来る人は、シンガポールだけで終わらない・・・
次は、ジャカルタ、バンコク等々。
仕事をするならシンガポール。
ベンチャー系企業が進出するなら、ジャカルタ。
リタイア系の人が住むなら、マニラ・バンコク。
シンガポールは、日本より安全、秩序正しい。
ホームレスもいない。スラムもない。
文化的な施設も整っている。美術館、コンサートホール、アートイベント、トラベルイベント、フードイベント等々も盛ん。
なによりも、シンガポールは基本的に合理的な人が集まっている。
合理的で透明な政府・・・そんなシンガポールの方針に賛同して集まってくる。
言ってみれば、シンガポールは日本の良いところをしっかり真似て、良くないところは取り入れなかったともいえる。
年金政策、住宅政策も素晴らしい!
移民政策を、頭から議論しない日本は、ナンセンス!
どういう移民政策がとりうるのか、しっかりと議論してみた方が良い。
シンガポールは、先日、2030年に人口690万人にするというロードマップを発表。国がどういう方向に向かっていくのかが見える! これがシンガポール。
■深く、そして重く考えさせられたミーティング!!
残念ながら、日本はビジネスとしては見切っている。
いつ行っても変わらない安心感=誰も置いてきぼりにしない居心地の良さはあるが・・・
バンコク、ジャカルタは、変化が大きくて、半年も行かないと不安で不安で仕方がない!!
かなり盛り上がって長時間話し込んだ後、あの○○ファンドで有名になった〇〇さん(シンガポール在住)と、これから夕食を一緒に・・・と言って別れたのです。
日本の弁護士業務を縮小、撤退してでも、シンガポールを拠点として、バンコク、ジャカルタ・・・等々に関連するコンサルティングを展開しているのです。日本以外では、弁護士資格を使えないにもかかわらず・・・
深く、そして重く考えさせられたミーティングでした!!
平成25年(2013年)5月
TFSグループ 代表
TFS国際税理士法人 理事長
山 崎 泰 |
|
|
|