■「3年以内に海外移転」4割にも
7月15日の日本経済新聞一面は、かなり衝撃的な内容でした。約4割の経営者が、「このまま円高の是正や税制の見直しが進まなければ、3年以内に海外へ生産拠点などを移さざるを得ない」と回答。
「震災に伴う政策課題の棚上げと、エネルギー政策の迷走で電力不足問題が長期化する懸念から、国内生産が維持できなくなるとの危機感が広がっている」というトップ記事。
6月2日以降、完全に止まってしまったかのような国内政治。
15%削減で国内では足並みを揃えるも、それはあくまでも国内での話。国際間競争で生き残らなければならない企業にとっては、“充実した電力供給”や“負担の少ない税制”を海外に求めざるを得ない現実があるのです。
国内政治が「内向き」の迷走を続けている間に、経済や市場原理は待ったなしで「外向き」に走っています。
この現実から、目を背けるわけにはいきません。
そのことに、どれだけの政府・国会関係者が、本気で気づいているのでしょうか。
ひとり総理だけの問題ではないように思えてなりません。
■今の日本が置かれている状況を、これだけ端的に---
上海で日本からの数多くの進出に携わってきた日系コンサルタント会社の総経理(社長)と、上海の街中を歩きながら---、
「今、上海進出のコンサルティングをした日系企業のうち、9割が黒字なんです」
と、彼が申し訳なさそうに教えてくれるのです。
日本では、長年7割の企業が赤字といわれてきているのに---驚きです。
「2007年までは、中国に進出する企業をサポートして、最後は日本が成長する手伝いをしたいと思っていました。」
「でも今、ここまで勢いに差がついてしまうと、日本という国は厳しくても、日本企業が世界で頑張ってくれればいい、と考え直すようになりました。」
残念ながら、まさに今の日本が置かれている状況を、端的に言い表しているように思えて、考え込みながら、思わず上海の街中で立ち止まりそうになったほどでした。
■アジアに進出している日本企業の状況
やはり、進出先では中国がダントツです。そのうち約5割が、上海及び華東地区に集中しています。
伸び率が最も大きいのは、インド。
いわゆるペーパー・カンパニーを合わせれば、香港は約3,000社超、シンガポールは2,000社超、ベトナムは1,000社超、タイは3,000社超ともいわれているくらいです。
巻頭ブログの中で、製品ライフサイクル曲線をご紹介しました。それでは、各国を製品に置き換えてみて、製品(市場)として
の魅力はどの段階にあるのかを示したのが、この曲線です。
香港は、2004年〜2006年が成長期。今はもう成熟期に差し掛かっています。
上海も、成熟期に既に達している感があり、物価等もかなり上がってしまっています。しかし、かつての中国が「世界の工場」として成長したのに対して、今の中国は「世界の市場」としての魅力。その市場を牽引しているのが上海であることは間違いありません。
ベトナムやタイは、成長期なだけに、日系進出企業もかなり競合している状況。ハノイでは、既に日系企業同士の価格競争が激しくなりつつあるとも聞きます。
これからの成長を狙うのであれば、ミャンマー、インドネシアと言った国々でしょうか。
■中国アジア進出支援ネットワーク
いずれにせよ、これから10年〜20年は、政治的にも経済的にも中国はじめアジアとどう向き合うかが、日本にとって最大の課題だと認識しています。
巻頭ブログでも書いたように、残念ながら日本の人口は減少し、ベトナムなどとも人口逆転し、国内市場自体が縮小していくのは避けがたい事実だと思います。
経済原則に生きる日本企業(もちろん中小零細企業も含めて)の成長は、発展を続ける中国・アジア市場をいかに自社の事業に取り組むかを検討することを避けては通れないでしょう。
しかし、気持ちはあっても言語や制度や習慣が異なる海外進出は、リスクやトラブルを考えると躊躇してしまう、という企業が大半かもしれません。
そこでこの度、全国の80に及ぶ会計事務所とともに、中国・アジアにおける税務・会計・労務・法務のプロフェッショナルがネットワークを組み、進出に関するリスクやトラブルを回避して、海外への市場拡大事業に貢献しようと、私どもも『中国アジア進出ネットワーク』に加盟することとしました。
現時点では、海外進出支援の会計事務所ネットワークとしては日本最大かと思います。
市場を海外にも広げることにより、顧問先様はじめ日本企業、ひいては日本の経済成長にも寄与していくことを、会計人の仲間とともに誓っています。
|