■気仙沼(東日本大震災)と新長田(阪神淡路大震災)の交流会
巻頭メッセージでもふれましたが、2日間にわたり、東日本大震災で甚大な被害を受けた気仙沼商店街の皆さんに同行して、神戸市の長田区を視察してきました。
16年前、阪神淡路大震災で町の大半を焼失しながらも、見事に立ち上がって復興した新長田商店会に復興までの足跡を学び、復興した町を視察し、さらに被災経験者同士の交流を通じて、「元気」と「勇気」をもらおうという一泊二日の交流会が開催されたのです。
私たち会計人も気仙沼をはじめとした東北地方被災地の復興に向けたファンドを組成して、生活再建に向けた復興支援を、急ぎ準備していることから、視察・交流会に同行してきたのです。
■負けないで!気仙沼商店街の皆さん
視察の陣頭指揮をとっていた気仙沼の商店会長は、ふかひれ寿しで有名な寿司屋さん。
気仙沼店は再開の目途が立たないが、仙台店が先月やっと再開できたとのこと。
交流会で私の隣りに座られた割烹料理店主。「年老いた老人を大事に」「産んだ子どもを大切に」という、避難所で生まれてきた思いやりや連帯感が嬉しい。全国から炊き出しにきてくれる方の姿を見ると、涙が出るほど嬉しいと語る姿に、思わず涙しそうになります。
被災地から持ってきてくれた日本酒を酌み交わしながら、語り合いました。
和洋菓子の製造販売業を営む店主。昨年11月に新装オープンしたばかりの店が流されてしまい茫然自失だったとのこと。
気力で、やっと6月11日に仮店舗で営業再開することに。まさに、二重ローンの問題を抱えなければよいと願いつつーーー。
コロッケ店を営む青年会長。店は全壊だったが、1台だけ残った移動販売車で営業再開。今は、市内小学校から数千個に及ぶコロッケ注文を懸命にこなす日々。自宅は、まさに津波が一軒手前まで来た、という間一髪で難を逃れたのです。
新長田の商店会視察途中、肉屋の前に立ち止まって、避難所で待っている皆が喜ぶからと、地元名産の神戸牛をすき焼き用にして3kg買い込んでいた時の横顔が、とても印象的でした。
美容師の青年会副会長。8月までに予定している仮設店舗を設計する際の参考にしようと、新長田商店会の視察始終、片時もデジカメを離さずに熱心に話に聞き入っていた姿が忘れられません。
気仙沼の皆さんとは、次週の再会を約束して新長田で別れ、三宮から高速バスで自宅そして避難所に帰郷されました。
NHKがピッタリと密着取材していたので、テレビ等でご覧になった方もいらっしゃるかも知れませんが、感動的な交流会でした。
■被災地の危機感、そして厳しい現実
被災地の地元には、もとに戻しただけでは「シャッター通り」、すなわちシャッターが閉まったままの寂しい商店会に戻るだけという、強い危機感があります。
『復興』を目指すからには、新しく生まれ変わらせなければならない。店舗は気仙沼だが、商圏は日本全国。一品でも良いから、全国に通用する商品・産品を売っていきたい。
そんな想いを受けて、被災地の商品や産品を全国ネットで購入していこうという、気仙沼商店街全国応援団が結成されたのです。
しかし、応援団が立ち上がっても、「売る商品がない」という高い壁が立ちはだかっているのも厳然たる事実です。
あまりにもつらい現実です。
交流会があまりも感動的だったので、ついつい前段が長くなってしまいました。
さて、震災関連の税制に入ります。
確かに、東北地方以外では、直接損害を被った方は少ないかもしれません。しかしながら、取引先が被災したり、社員さんやその実家が被災したりして見舞金を出したというケースは少なくなかろうと思います。
そこで、震災に関連する税の取扱について、概要をご説明します。
■災害により滅失・損壊した資産など
法人の有する商品・店舗・事務所等の資産が災害により被害を受けた場合、次のような損失又は費用が生じた時には、当然ですが損金の額に算入されます。
- 商品・棚卸資産・店舗や事務所等の資産が災害により滅失・損壊した場合の損失の額
- 損壊した資産の取壊し・除去のための費用
- 土砂等の除去のための費用
■復旧のために支出する費用
被災資産について、資本的支出とするか修繕費として全額損金となるかの判断基準です。
- 被災資産について、その現状を回復するための費用は、修繕費となります。
- 被災資産の補強工事(同規模の地震を想定した限りでの補強)は、修繕費とすることができます。
- 上記以外の被災資産について、資本的支出か修繕費かが明らかでない時は、30%を修繕費、70%を資本的支出とする処理ができます。
■従業員等に支給する災害見舞金品
法人が、災害により被害を受けた従業員やその親族等に対して支給する災害見舞金品は、福利厚生費として損金算入できます。専属下請先の従業員等に対しても、同様です。
なお、見舞金を受けた個人は、社会的相当の範囲内ならば課税の対象にはなりません。
それに対して、見舞金を受けた法人は益金算入(一方で、災害損失が損金算入されるので)となります。
■災害見舞金に充てるために同業団体等へ拠出する分担金等
法人が、所属する同業者団体等の会員が災害により損失を受けた場合に、損失補填を目的とする同業団体の規約等に基づき合理的な基準に従って拠出する負担金は、損金算入できます。
なお、規約は災害を受けて作成したものでも構いません。
■取引先に対する災害見舞金等
法人が、被災前の取引関係の維持・回復を目的として、取引先の復旧過程において行った災害見舞金等は、交際費に該当せず全額を損金算入できます。
■取引先に対する売掛金等の免除
法人が、災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として売掛金・貸付金等の債権を免除する場合には、寄附金や交際費等には該当せず、全額を損金算入できます。
なお取引先に低利や無利息で融資を行った場合にも、通常の利息との差額は寄附金に該当しないこととされています。
■自社製品等の被災者に対する提供
法人が、不特定または多数の被災者を救援するために緊急に行った自社製品等の提供は、寄附金や交際費には該当せず、全額を損金算入できます。
支給による企業のイメージアップなど、実質的な広告宣伝費として扱われます。
■災害による欠損金の繰越
棚卸資産・固定資産等について災害により生じた損失に係るものがある場合、青色申告書を提出しなかった事業年度であっても、その災害損失欠損金額に相当する金額は、その事業年度において損金算入できます。
2011年(平成23年)6月
山 崎 泰 |