2011年2月


『中小企業金融円滑化法が延長』されたは良いが…
 

金融庁 昨年12月14日付けで、中小企業金融円滑化法が延長されました。
 正式名称は、「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」。

 中小企業や住宅ローンを組まれている債務者からの相談に対して、銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫などの金融機関が、貸付条件の変更などに応じるように務めることを盛り込んだ法制度です。
 この法律により、債務者が金融機関に対して返済条件変更(Re Schedule、略称リスケ)の申請を行うと、金融機関はいったんは必ず受け付けてくれるようになりました。もちろん、最終的にリスケ要請に応じるかどうかは、金融機関の判断ですが---。
 またこれまでは、リスケ申請の段階で「経営改善計画書」がないと金融機関に応じてもらえないことがよくありました。
 この「経営改善計画書」の提出をリスケ申請後でもよいとした点が、この法律の大きな特徴でもあります。
 
 中小企業金融円滑化法は、本来平成23年3月31日までの時限立法だったのですが、平成24年3月31日まで、1年間延長されました。

 経済・金融環境が厳しくなる中、私どもの顧問先からも、中小企業金融円滑化法に基づくリスケ申請に関するご相談が、増えてきました。
 新しい店舗を出店したサービス業。2店舗目までは、社長の目も行き届き、うまく回転していたが---消費不況とも重なり3店目の売上が思うように上がらず、会社としての力・人員が3店舗に分散されて、運転資金がショートしそう、等々の様々なご相談が寄せられます。

 拙著にも書きましたが、リスケ申請自体は金融機関が必ず受け付けてくれるようになったからといって、「リスケ申請は最後の手段」だということだけは忘れないで下さい。

 例えば、先のサービス業ではどうしたか?

 資金繰り改善のために打った手は、順を追って3つ。

@ 顧客獲得能力のある(または既存顧客を持つ)スタイリストを採用。既存顧客を持つスタイリストが採用できれば、一人あたりの利益率が見込めるため、人材採用に注力する。

A 役員給与を、改定期に合わせて大幅に減額。これまでは役員給与をいったん受け取ってから会社に貸し付けていた流れを変更。それにより、源泉所得税や社会保険料等のキャッシュフローを改善。

B 最後に、借入本数が複数ある金融機関、利率が高くかつ返済期間が長い金融機関から、リスケ交渉。

 対応する金融機関側は、こんな循環になろうかと思います。

 中小企業金融円滑化法により、貸出先の中小企業に関する将来リスクが急速に増大する懸念
  ↓
 本来であれば不良債権とされる貸出先がさらに増える
  ↓
 貸出先の中小企業に、頻繁に「経営改善計画書」の提出を求める
  ↓
 貸出先の中小企業に、「経営改善計画書」の実施状況を求め、試算表などの「モニタリング資料」を頻繁に求める
  ↓
 中小企業だけでは「経営改善計画書」「モニタリング資料」などの作成・チェックが間に合わなければ、会計事務所に対して求めるようになる


 資金調達に限りませんが、経営者として相手(資金調達なら貸し手)の立場も考えられるか――企業を強くしていくための大事な姿勢のように思えてなりません。

 
 
                   2011年(平成23年)2月
                              山 崎  泰