2010年1月


「税金の使いみちを変える」元年に!
 謹んで、新年のご挨拶を申し上げます。
 今月号は、新春号ということもあり、松下政経塾以来、20年以上の同志である前原誠司・国土交通大臣に最終面のコラムに寄稿をして頂きました。
 まさにその中にある『税金の使いみちを変える』『国と地方のあり方を変える』『依存から自立へ』という国家目標は――私自身がこれまで主張してきた点と、全て一致するものであり、意を強くしました。政経塾OBが集った席で、大臣就任のお祝いを伝えた際、「実はあまりめでたくもないんですよ、大変で」との本音の一言に、同志として心から応援したい気持ちでいっぱいになった次第です。
 首都・都議会の議員として税の使いみちを決める側に立ち、一方で税を納める納税者の代理人を務めてきた――『税』を両方向から見続けてきた稀少な経験を持つ一人として、『税を納める大変さ』を刻み続け、何よりも『税を大切にする』ことに心血を注ぐことこそ、使命だと感じています。
 そんな中お恥ずかしながら、私の住む新宿区で非常に残念なことが起きました。
 「タヌキの森」訴訟事件とも呼ばれ、昨年12月17日のニュースは新聞各紙やテレビ等で一斉に報道されましたので、ご存じの方も多いかと思います。 
 事の起こりは、2004年。新宿区の落合地区に樹齢約200年のケヤキ等が残り、タヌキが生息していた高台があり、通称「タヌキの森」と住民が呼び親しんでいた緑地に、突然マンション建設計画が持ち上がります。
 森の保存を求めて住民が立ち上がり、土地を買い取り公園化する基金として約2億3,000万円もの基金まで集めます。しかし結局、その基金を足しても区は土地を買収することができず、区は建築確認を出し、建設工事が始まってしまいます。
 ここまでは、様々な自治体でも起こりうる事態だろうと思います。

 特筆すべきは、ここからです。
 災害時の避難のため建物敷地に接する道路幅を定めた都条例違反で、「安全基準を満たさない」まま建築確認を出したとして、区民が新宿区を訴えたのです。
 住民税を支払って区を支えている新宿区民が新宿区を訴え、新宿区が住民税等を使って新宿区民と裁判する。すべて、賄われているのは、区民の税金です。
 さらに昨年1月、東京高裁で新宿区が敗訴し区議会等の一部関係者が訴訟取り下げを進言してきたにもかかわらず、最高裁まで区民の税金で区民と訴訟。
 挙句の果ては、最高裁で新宿区敗訴が、全国的に報道されるや、「いったい新宿区はどうなっているんだ!」との問い合わせが私の許にも多く寄せられました。
 完成間近のマンションの建設確認が最高裁まで争って取り消され、自治体が敗訴するという前代未聞の事態に、マンション建設会社からの損害賠償額は20億円にも上るとすらいわれているのです。
 もちろん、この賠償額も区の職員の連帯責任で賄われる筈はなく、全額新宿区民が負担することになるのでしょう。もちろん、私の長年の貴重な住民税も--。「税を大切にする」私の使命感からして、どうしても納得がいかないのです!
 もちろん、区の財政は国や都との関係もあり、住民税だけで成り立っている訳ではありません――しかし、都市部の悲哀か、新宿区の職員には住民税を納めている新宿区民が極めて少ない実態を考えると、「税は、自ら痛みを持って支払った人が、最も大切に使う!」大原則に戻さなければ、と強く思わざるを得ません。

 国も自治体も、『税金の使いみちを変える!』時に来ていると確信しています。


(右上写真:松下政経塾OBによる合宿にて)