2010年8月

 
 衆議院の財務金融委員会の視察でギリシャに行ってきました。ご承知のようにギリシャは、財政危機で、年金や公務員の給料がカットされ、これに反対するデモ隊が火炎ビンを投げたりする光景がTVで何度も放映されていました。私も現地に行くまでは、そうした危険も覚悟していたのですが、実際に行って見て日本で想像していた様子とは大違いで驚かされました。観光の名所、パルテノン神殿は世界からの観光客でごったがえしていましたし、海辺のレストランは満席でした。

◆聞くと見るとでは大違いのギリシャ経済

 ギリシャ国民はラテン系民族で、地下経済もGDPの30%以上という国柄です。国民の持ち家率は80%に達し、別荘の所有率も60%、ヨットやクルーザの所有率は5%程度というのが実態で、国家財政は破綻していても、国民の生活は豊かで以前とほとんど変わらない生活をしているようでした。
 もちろん、今回の経済危機が国民生活に影響を与えたことは事実です。しかし、その内容についても日本で考えていたのとは大きく違います。
 具体的にはギリシャで年金がカットされたとの報道がありますが、驚いたことにギリシャの年金制度は55歳から支給が開始され(ギリシャ国民の平均年齢は男性79歳、女性83歳で日本とほぼ同じ)、年金には毎月の支給の他にボーナスまで付いていたそうです。これを支給は65歳から、ボーナスは廃止にしたわけですから、当たり前といえば当たり前の「カット」です。またギリシャでは、政治家のコネによって、本来なら年金加入年数が足りずに年金を受けられない人にも、年金が受けられるようになっていたので、厳正に支給するようになったというのですから、これは経済の問題というより政治や社会の問題です。

◆GDPの3割が地下経済

 また、地下経済ということでは、商店で買い物をしても領収書はほとんど発行しません。領収書が欲しいといって発行してもらっても、そこに書かれている金額と、実際に受け渡した金額が違っているのです。
 また、銀行の預金口座についても、これまでは警察や監督官庁が問い合わせても、銀行は預金保護を理由に、裁判所の許可がなければ応じられないことになっていました。現在は、裁判所の許可がなくても監督官庁が問い合わせをすれば金融機関は口座の内容を知らせなければならない決まりになりましたが、それも十分に守られてはいない現状です。
 税制では、付加価値税(日本の消費税に当たる)の税率をこれまでの21%から23%に引き上げました。それでも先ほどの商店の例のように、領収書を発行しなければ、その売り上げは課税の対象から外れてしまうことになります。
 その意味では、先ず行わなければならないのは、そうした地下経済を表面にあぶりだすことですが、ギリシャ人の国民性もあって、一朝一夕にはできない相談です。

◆ギリシャのおかげでドイツ経済が復活?

 今回のギリシャ危機で、ユーロ圏の国々は、財政支援を行い、そのシワ寄せを被ったドイツなどでは国民の反発を招いています。しかし、ギリシャ国民は、そうした点をあまり気にかけていません。ギリシャの有力銀行の頭取は、私たちに対して、「ギリシャ危機のおかげでユーロが安くなって、ドイツは輸出を伸ばして景気がよくなっている」とあっけらかんとしていました。
 ギリシャの危機をきっかけに「日本も財政危機を早く解決しなければいけない。そのために消費税を上げるべきだ」というのは、ためにする議論で、ギリシャの危機とは別に、日本の財政の問題を考えなければならないというのが正しいギリシャ問題の捉え方でしょう。